フィンガーランプ -意匠について-

先日フレットレス加工を行ったFUJIGEN Neo Classic JBにランプを取り付けました。

Hadrien風です。






最近は特にランプ製作の依頼が多いです。大変ありがたいことです。

今回は自分が製作するランプについて、部分的にですが詳しく書きたいと思います。



まず、表面のRの有無ですが、これは人によって好みの分かれるところです。
Rが無ければPUの上面とツライチに出来ることが大きなメリットです(RつきのPUでは話が別ですが)。

指板のRがゆるい場合や弦の数が少ない場合はR無しで問題ありませんが、Rがきつかったり、5弦・6弦と弦の数が増えていくと、Rをつけた方が良い場合が多いです。

さて、Rをつける場合、指板と合わせるのが発想としては普通です。
しかし、弦ごとに弦高が異なる(一般に、低音弦に行くにしたがい弦高は高くセットされる)ことを考えると、単純に指板に合わせるだけでは低音弦とランプとの距離が開きすぎる場合が少なくありません。ですので楽器のセッティングや弾く人の好みによってRの付け方には工夫が必要になります。これはやはり特に弦が増えるにしたがい重要になってくる事柄だと言えるでしょう。
通常、低音弦側をゆるく、高音弦側をキツく仕上げると演奏感のバランスが良くなりやすいように感じます。
(ちなみにこの方法はぎぼっちさんの要望を受けて取り入れたものです。)

P5300255.jpg

また、非常に重要なのが高さの調整ですが、これは弾く人がランプに何を期待するか・どう活用すか、の問題ですので、本人が弾きながら調整する必要のある部分になると思います。

ランプとボディの間に薄い何か(木板など)を挟んで微調整することになるのですが、単純に上下の動きだけでなく、角度の設定にも気を付けると良いでしょう。
低音弦側と高音弦側の高さのバランスはもちろん、ローポジションで押弦したときとハイポジションで押弦したときとでは弦の角度が変化するので、それに対してランプをどう設定するか、といったことも考慮の必要がある事柄です。

ここの調整をきちんとすれば、表面のRは実はあまり大きな問題でないことが多いです。



さて、ここからが本番で、ランプの意匠といいますか、個人的なコダワリについてです。

道具として使用するものですから、【見た目】と【機能】の2つが重要です。
ここでは角の処理を例にとって自分の作業の一部を紹介したいと思います。

まず、R出し等を終えて形が出たところです。それぞれの面ごとにキッチリ仕上げていますので、当然角が立っています。

P5300264.jpg




そこで角を落とす処理をするのですが、角には大きく分けて3種類あると自分は考えています。

まず、【機能の面から落とす必要のある角】です。それがこちら。弦に沿った方向の辺にあたる部分です。
低音弦側は親指を置く部分ですし、高音弦側もピッキングする指がそこを通過するので、角が立っていては機能的に困る部分です。なので、必要な機能を満たす程度に落とします。まずはキッチリ45°で落とし、

P5300265.jpg




それから角を丸めていきます。ここで番手を上げる方がスムーズな場合が多いです。低い番手で一気に丸めようとすると締まりの無い造形になりやすいので、先に45°だけ落とす処理は有効です。

P5300266.jpg




次に、【見た目の面から落としたい角】です。ここは機能的には大きく落とす必要はありませんが、PUの角と隣り合う部分ですので、PUと同じ丸めかたをするのが見た目として落ち着きます。

P5300267.jpg




初めの角より大きく落とされているのがお分かり頂けると思います。
この段階で、PUの沿った辺にあたる角がキッチリ保存されていることが、締まりのある造形のためには非常に重要です。

P5300268.jpg




最後に、【見た目の面から言えばなるべく落としたくないけれど機能面で落とす必要のある角】です。長いですね(笑)。
それがこの、PUに沿った辺の部分です。
ここは見た目から言えば一切落としたくない部分です。キッチリと立てて、締まりのある見た目にしたいところです。しかし指が引っ掛かるようでは道具として問題ですので、ごくごくわずかに落としてやります。

P5310271.jpg

最後に処理したようなタイプの角は、かなり高い番手のヤスリを使用しています。素材によりますが自分は#1000くらいを使うことが多いです。きちんと当て木を使い、最低限の量だけ45°に落としてやります。角には圧力が集中しますから、簡単に削れてしまい、注意が必要です。




最後にスポンジヤスリで仕上げ、綺麗に丸めてやります。
3種類、それぞれ違った丸めかたをされているのが、この写真からお分かり頂けるでしょうか。

P5310278.jpg



道具の造形は見た目と機能をそれぞれ考慮し、どういった形にする必要があるのか考え、きちんと意図を持って仕上げる必要があります。

造形というのは面白いもので、、形そのものの差はわずかであっても、そこにきちんとした意図が有るか無いかで受ける印象は大きく変わってきます。

P5310294.jpg





以下余談…。

「意匠(=デザイン)」と言うと、単純に見た目という意味しか含まれないことがあまりに多いのは、どうにかならないものでしょうか。日本語で「デザイン」などと言うと特にそうで、だからあえて「意匠」などという通りの悪い言葉を使用しました。でもあまり意味はなさかった気もします。

通りの良い言葉ほど本来の意味からのズレや個々人ごとの認識の差が大きいように感じ、表面的には通じるものの本質的に通じているやらいないやら分からず、あまり使いたくないです。「デザイン」はもちろん、「テンション(感)」「グルーヴ」「鳴り」といった言葉も、自分からは使わないようにしています。
スポンサーサイト

プロフィール

たりき

Author:たりき
2016年まで「たりきこうぼう」としてギター・ベースのリペアを承っていました。
現在は PLEK JAPAN 勤務。私個人ではご依頼を承っておりません。

FC2カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR