シールド比較!

もうだいぶ前になりますが、いつもお世話になっているベーシストの真辺俊輔さんにドイツのケーブルメーカーSOMMER CABLEを紹介していただきました。
長い間頭の片隅には置いていたもののキッカケが無く試さずにいたところ、これまたいつもお世話になっているベーシストの森田悠介さんからシールドおよびパッチケーブル製作のご依頼を頂き、良い機会なので自分の分も合わせて14メートル発注。とうとう手に入れた次第です。

SOMMER CABLE SPIRIT XXL

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というわけで、せっかくなので手元のBELDEN8412、George L's155との3つで比較してみました。以下、トテモ主観的で定性的な話になります、ご容赦くださいませ。。。。
なお長さは全て5mです。



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George L's 155 Black

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高域まで良く伸びており極めてフラットな印象。そのため他のシールドと比較するとハイが持ち上げられている感触さえ受けます(というか相対的には持ち上げられていると言って差し支えないのかしら)。低域が出ていないわけではありませんが、音の量感とでも言うべきものは乏しいかも?オーディオ的な感じです。良く言えばピュア、悪く言えば細い。もっともそれがうまく活きるかどうかは他の条件次第でしょうが。

和音弾きが綺麗に聴こえます。その他、スライド時の指がフレットを乗り越える音、ハンマリング/プリング時の指と弦との摩擦音もクリアに聴こえてきて、入力を丸裸にされる感じです。

細いので巻いたときにコンパクトになるのは大きな魅力です。

ただし、取り回しは最悪です。繋ぎ換えている最中も幾度となく苦戦を強いられ、その度このシールドに対する印象は悪化。。。
長い間メインで使ってきたのですが、よくぞこんな物を使ってきたものだと改めて思いました。構造の格好良さで選択したNEUTRIKのプラグも、その大きさと重さが取り回しの悪さに一役買っているようです。

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もっとも、音のキャラクタ―としては癖が無く素直なので、エフェクトボード上で多数のエフェクターを繋ぐ際には威力を発揮すると言えるかもしれません。細くてスペースを取らず、また絡まる心配も無いためうってつけでしょう。George L'sはハンダ付け不要のプラグも売り出しているあたり、そういった使われ方を強く意識しているように思えます。




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BELDEN8412

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ド定番、の割に今回比較した3つの中では最もクセが強いと感じました。低~中域が持ち上がり、特に中域には独特のアクのようなものが感じられ、何となくザラザラします(ザラザラするのは上の帯域のどこかにちょっとしたピークがあるせい?)。音は太いと言えば太いのでしょう。特にレンジが狭いということはありませんが、中域のアクの効果で音の成分が真ん中に集まっている印象。その結果、アンサンブルの中で良い位置に収まりそうな、よりベースらしい音に纏め上げてくれると言えるのかも知れません。もっともそれがうまく活きるかどうかは他の条件次第でしょうが。

和音弾きは濁ります。高音弦の音の細さがカバーされる作用があるように思いました。雑な表現ですがロックなシールドなのかしら。

初めは取り回しが悪いですが、長く使う間にしなやかになっていきます。なお内側の構造はうざったくてプラグの取り付けは甚だ面倒です。ただ被膜の耐熱性が高いのは素晴らしい。




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SOMMER CABLE SPIRIT XXL

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ツルッと音が出てきます。性格としては先のGeorge L'sとBELDENの中間と言ってもいいかもしれません。イヤなアクが無いながらも量感があり、素直な音です。もっともそれがうまく活きるかどうかは他の条件次第でしょうが。

音と自分との距離感が適度で、最もストレスなく演奏できるシールドでした。

取り回しはとても良いです。透明被膜なのにここまでしなやかなのは驚きですね。今回初めて使用した軽量コンパクトなAmphenolのプラグと相まって、とても実用的でラクなシールドに仕上がっていると思います。





というわけで、シールド比較でした。SOMMER CABLEはとても気に入りましたし、多くの人にオススメしたいです。

ちなみに、これが今回の比較に使用した楽器たち。複数の楽器を用いることでシールドの性格があぶり出せたように思います。

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追記
読み返したところ、比較に比較を重ねてあぶり出した結論をポンポン書き連ねているため、あたかもシールドごとに大変な差異があるかのような記事に仕上がっていることに気付きました。実際のところ、自分が感じた違いは極めて微々たるものです。
人により、条件により、違いの感じ方は異なると思います。
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ナット溝考察その2

前回のナット溝考察その1に続き、今回はその2。溝の深さについてです。

演奏者の音や演奏感に対する考え方や好みの問題にはなるものの、ナットは可能な限り低い方が好ましいです。演奏に必要な力が小さくすみますし、弦に不必要な張力変化を与えずにすみます。もっとも、下げすぎると開放弦やナチュラルハーモニクスを鳴らすことに支障が出ます。目安としては1フレットで押弦して弾いた際に生じるバズと、開放弦で弾いた時に生じるバズが同程度であれば適切でしょう。(追記:押弦して鳴らしている音を止める際や、余弦のミュートではナットはもう少し高い方が有利かもしれません。まあ、そのあたりは結局好みですが。)

しかしながら、ナット溝の調整は手間のかかる作業ですから、市販(量産)品は必要以上にナットが高いものが多いです(∵低すぎて音が出ないよりはマシ)。またそうした楽器に演奏者の大部分が慣れてしまっていることから、ナットを下げ過ぎないことが好まれる向きが生じているようにも思います。

やはりナットはきちんと調整し、調整された状態に慣れることが、何より体の負担を減らすという意味で健全でしょう。


さて、ここでも弦の硬さに由来する理想弦と実際の弦のズレを見ていきます。





フレットに合わせてナット溝の深さを決定しては、実際の弦は良い位置に来てくれません。ナットを越えて曲がっている部分を考慮して溝を切る必要があります。

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もっとも、溝調整は弦を張っては緩め、音や感触を確かめつつの作業となりますので、理想弦がこうで実際の弦がどうだ、などと言った事は考慮してもあまり意味がありません。

気にしたいのは、実際の弦のもつ曲がっている部分の大きさが、外からの力によって変化するという事です。

弦を張ってから曲がっている部分を指で押さえつければ、弦の状態は理想弦に近づきます(重ね重ね、「この状態が理想的」という意味ではありません、念のため)。つまり、弦をどう張るか(張ってからどうするか)によって溝の深さをどこまで持って行くか考える必要があるのです。




さてここまでは前置きで、今回考慮したいのがフレットレスのナット溝です。

道具として理に適った状態、というのは、もちろんナット溝の下端が指板面と一致している状態です(これを「道具として理に適った状態」と言っているのは、押弦時には指板面に弦の下端が接触しているためです(何アタリマエな事を言ってるんだ、という感じですね))。しかしこれではやはり弦の硬さにより、指板に対して弦が良い位置に来ません。

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しかし、指板があるためこれ以上ナットの高さを下げることはできません。

それでは、指板の端を削ればよいでしょう。

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これで指板に対して良い位置に弦が来ます。

ちなみにこうした加工は、過去一度も行っていません(ここまで言っておきながら!)。アイデアとして頭の中にあるのみです。

実際のところ、フレットレスでナット溝をどんどん追い込んで行くと、ナチュラルハーモニクスを鳴らすのが極めて困難になってきます。また指板端が落とされた状態は美観にも難があることが容易に想像がつきます。さらに押弦位置とナットとの間の弦の振る舞い等々を考慮しますと、多少余裕がある方が結局は好ましいということになりそうです。


さて、これまで話題の軸になっていたのは「弦には硬さがある」ということでした。

それを考慮したうえでナットによる振動の端点設定を行う、というお話でしたが、それ以前の問題として「弦に硬さがあるのなら、そもそも設定した端点が本当に振動の端点になってくれるのか?」という疑問が湧きます。

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これはオクターブチューニング等々の話題に繋がっていきます。

つづく

ナット溝考察その1

ナットを製作・調整する際は、溝をいかに切るか?というのが非常に重要な問題です。

楽器を横から見て、溝の切り方にはa,b,cの3通りが考えられます。


(a,b,cといくにつれて弦がポストに巻かれる位置が下がっていますが、これは図を見やすくするためであり、ここでは意味を持っていません。)

張力のかかった弦がヘッド部分で下に折れ曲がることにより、ナットへ力がかかります。この力が弦の振動部分の端点を決定することになります。

さて、ここで考慮したいのが、実際の弦には硬さがあるためa,cのように折れるようには曲がらないということです(そもそも折れるように曲げようとすること自体が不適切であります)。

aの場合、弦は点Aに接触さえしません。

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(ちなみに「理想」とは硬さが無い、という意味であり、「弦はこのようになるのが楽器として理想的」という意味では勿論ありません、念のため。)


一方cでは点Aのみでナットに接触します。

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端点設定という意味では良い事ではありますが、一点に力が集中するのはナットの耐久性という点では好ましくないでしょう。また弦がナットに引っ掛かり、チューニングが不安定になることにも繋がります。

bではナット溝が円弧状に切られており、溝の底に均一に力がかかっています。これは耐久性・安定性という点で好ましいです。

自分がナット溝を切る際には、耐久性・安定性をみたしつつ振動の端点を確実に点Aに設定することを狙い、bとcの中間くらいになるよう意識しています。

もちろん、ナットの幅や弦の硬さによって、狙う(狙える)形状は変わってきます。



さて、次は楽器を上から見ての考察です。

横方向にポストがズレている場合、ナット溝の角度をどうするかが問題になってきます。ここでもx,y,zと3通り考えられます。

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この方向ではAに力をかけるという事を考える必要は、基本的にはありません。

強いて考えるならば図中のθ1とθ2で、θ1>θ2という意味ではxよりzが好ましいと言えるでしょう。先ほど考察した縦方向の力によって弦振動の端点設定に必要な力は得られており、したがって横方向に曲がる角度は小さい方が良いためです。しかしこれは非常に微妙な差です。

それ以上にやはりまず、弦の硬さについて考慮する必要があるでしょう。

xの場合、ナットから振動領域にかけて弦が直線状になっています。

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一方zの場合、弦の硬さによって振動領域の弦が曲がる事になります。これはナット付近の弦間を設定するうえで問題になりかねません。

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もっともこれも、非常に微妙な問題であるだろうと思います。

結局、溝の一点に力を集中させないという観点からyが適切であると言えるでしょう。そういう意味では溝は円弧状になっているべきですが、その加工は困難です。

ともあれ、横方向では縦方向と違い振動の端点設定という役割は担っていないため、美観が一番大きな問題になってくるように思います。


ナットの話はもう少し続きます。次回は溝の深さの設定についてです。

プロフィール

たりき

Author:たりき
2016年まで「たりきこうぼう」としてギター・ベースのリペアを承っていました。
現在は PLEK JAPAN 勤務。私個人ではご依頼を承っておりません。

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